本来は映画の制作裏事情なんて大して興味ありません。さりとて、「出来上がったものがすべて。裏事情を出来の悪さの言い訳にするな。」と言い放つほどの薄情者でもありません。 たとえば、潤沢な制作費があり、脚本執筆に長期間を費やし、撮影に贅沢な日数をかけた結果としてこの『GONIN2』があるなら、それこそ「大バカヤロー!」です。でも撮影半ばで制作費を半分に削られ、やむなく現場で脚本を書き直しながら撮影を進めたという自転車操業的事情を考えると、「それでよくここまでの形にしたな。」と感心させられるわけです。 あちこち破綻している映画ですが、それをもって「石井隆には才能がない。」と断罪するほど私は偉くありません(笑) いや、むしろ才能があることの証明じゃないでしょうか、これ。 叶うことなら、「使わなかったネガがたくさん残っているから、ディレクターズ・カット版が作れる。」という、その完全版を観てみたいものです。もちろん、本来の脚本で、本来の制作費のもとで作られた『GONIN2』を最も観たいわけですが。
それにしても、こと日本映画のことになると、なぜA級作品であることを要求する人が多いんでしょうか?これがハリウッド映画や香港映画になると、B級作品としてもっと大らかに観ているというか、採点基準がだいぶ甘くなるのが不思議です。場合によっては、B級作品の存在価値まで語ったりして。 「A級じゃない!」と言いたくて日本映画の粗探しをする方には申し訳ないほど、この『GONIN2』は正真正銘、紛れもなく素晴らしい、呆れ返るほどのB級映画です。
前作ではバイオレンスの中に人間を描こうとする試みが見て取れましたが、今作は明らかに物語を語ろうとしています。その意味では、石井隆監督がハリウッド調娯楽路線へ大きく舵を切った作品。といっても、それがご本人の望むところなのかどうかは疑問のあるところです。 「どこが気に入らないのか言ってくれれば手直しする。村木と名美じゃない映画だって撮れるんだけど。」といった発言を聞くにつけ、この監督の置かれているポジションが見えてしまいます。 才能や技量とは無関係。「村木と名美みたいな映画じゃなく、もっと客の入るやつ」という注文(制約)が映画界の通り相場らしいですから。、、、、、その結果がこの荒唐無稽さ。
まずは、もう少しどうにかして欲しかった点。 自殺した妻(多岐川裕美)の復讐に燃える外山(緒方拳)が仇の一人・中嶋(飯島大介)を殺し、手に入れた500万円を持って宝石店を訪れる。妻が気に入っていた猫目石の指輪を買うために。そこでは既に宝石強盗事件が起きていて、偶然店内にいた5人の女たち(余貴美子、大竹しのぶ、夏川結衣、喜多嶋舞、西山由海)が強盗と格闘した末に宝石を横取りし、持ち去っていた。そして、実はこの間抜けな強盗グループ、妻の仇でもあった。、、、ちと偶然多過ぎでしょ。セーラー服姿の売春婦・サユリ(大竹しのぶ)がなぜにその格好で宝石店に入ってくるか大いに疑問ですし、このシークエンスの中に何か一つでも必然性を与えてくれれば良かったんですけど。加えて言えば、5人がなぜ宝石店で弾けてしまったのか、その前提をもっと描き込んで欲しかったですね。それすなわち5人のキャラの描きわけ。カットされた箇所があるように思えてなりません。 前作にも登場したディスコ『Birds』で宝石を山分けした5人。防犯カメラが作動していなかったことに狂喜し、ジュークボックスの音楽に合わせ踊り出す。、、、、観ているこっちがだいぶ恥ずかしい。 外山が誤って斬りつけてしまった強盗団の直子(片岡礼子)。重傷を負った身でありながら、なぜかプールで泳ぎ出す。、、、、あり得ないでしょ。俯瞰でああいう絵を撮ってみたかったという意図しか感じられません。蛇足。
次に、こうしてくれたら嬉しかったのに点。 片岡礼子をもう少しフューチャーして欲しかったですね。なんなら大竹しのぶの役なんて初めから無しで、余貴美子、夏川結衣、喜多嶋舞、西山由海、片岡礼子でいってくれていたら。強盗団から寝返っちゃったりして(爆)
次に、良かった点。 大竹しのぶの舞台スケジュールの都合で、当初の予定より早く死ぬことに。いっそもっと早く死んでくれても良かった。観た方ならわかるでしょう。 相変わらずキメキメ・シーンでの絵作り。厳しい撮影スケジュールの中でよくもまあこれだけ。低予算で短期間。組合の強いアメリカじゃこんな絵は撮れないでしょう。やはりプロの仕事です。前作には遥かに劣りますけど。 余貴美子のカッコよさ。ラスト近くの拳銃乱射シーン。拳銃の構え方からして他の2人とは比べ物にならず。
最後に擁護すべき点。 この映画は、女5人の行動を男目線で見てしまうと少々理解不能であったり、くさすぎたりします。 そもそも女性は、自分の、あるいは自分の家族の幸せが一番大事な生き物。だからこそ、普通の主婦・志保(西山由海)は隙を見て消えるし、それを見ていたちひろ(喜多嶋舞)は引止めもせず、黙って見送る。この映画は、そういう本質を持つ女性たちが連帯し、男の暴力と闘うというおとぎ話です。ましてやお互いのこともろくに知らない女性同士。連帯するにはくさすぎるくらいの非日常が必要となります。敵であるヤクザは、どこまでも憎々しく暴力的でなければなりません。ステレオタイプなヤクザで丁度いい。 そして、この5人(正確には3人)はそれぞれが男の身勝手に翻弄されて生きてきた女たち。であるからこそ、外山の純情にほだされます。いや、この3人は外山に惚れてしまっています(これを「くさい」と感じる男性は、普段でも女性に歯の浮く優しい言葉などかけられないタイプなのかも)。そう考えれば、妻の遺体を外山の元に運ぶちひろと早紀(夏川結衣)の心情も得心できます(ただ、あれしか運搬方法がなかったということで、スピード感に欠けるのがつらい)。 つまり、石井隆はまたもやここで「男尊女卑の壁を打ち破って自立していく女」というテーマを復活させています。 そして、女たちを守るように、何発銃弾を浴びても倒れない外山。根性で倒れない。意地でも倒れない。もうここまでくると漫画です。DVDの音声対談で石井監督自らが「死後硬直で倒れない」と笑いながら語っているように、怒らずに笑っちゃえばいいんです。 なんせB級映画なんですから。 やたら鳩飛ばすこの映画。ジョン・ウーも苦笑い。 70点 よろしければクリックで1票を☆
テーマ:日本映画 - ジャンル:映画
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